― 60代後半の私が、退職後に見つけた新しい日常 ―

はじめに|定年の先に、思いがけない「二人三脚」

 「仕事を辞めたら、少しはのんびりすれば?」。妻からはそんな言葉をかけられることがあります。長く勤めた仕事を離れた後の暮らしは、私自身もなかなか想像できませんでした。ところが今、私は息子と同じ事務所の一員として、書類を広げ、相談ごとについて話し合う日々を送っています。

 息子の呼び名は「とも」。現在、行政書士事務所の代表を務めています。親子と仕事をすることになるとは、以前の私には思いもよらないことでした。今日は、専門的な制度の解説から少し離れて、私たち親子の歩みと、60代後半になって感じる「働くこと」「備えること」について書いてみたいと思います。

1|息子が選んだ、もう一つの道

 ともは、もともと警察官でした。その後、行政書士の資格を取得し、3年前の10月に自分の事務所を開きました。安定した道を離れ、新しい仕事を始める。その決断には、本人にしか分からない迷いや覚悟があったのだと思います。

 開業したからといって、すぐに仕事が順調に増えるわけではありません。一歩一歩経験を積み重ねながら、自分の目指す事務所づくりに向けて、地道な努力を続けてきました。決して平坦な道のりではなかったと思いますが、自分で選んだ道を大切にしながら、少しずつ前に進んでいます。親としては、つい「大丈夫だろうか」と心配になります。しかし、本人が選んだ道です。簡単に答えを出すより、まずはその思いを尊重したいと考えてきました。

 仕事の話をするときのともは、家庭で見る息子とは少し違います。自分なりに調べ、考え、責任を持とうとする姿に、いつの間にか大人になったのだな、と感じることがあります。親子の関係は、年齢とともに少しずつ変わっていくものですね。

2|法務の仕事は、人生の節目に寄り添う仕事

 私は長年、公務員として法務に関わる仕事を続け、その後は公証人として働きました。公証人時代には、遺言、任意後見、信託、離婚給付などの契約や、さまざまな文書の認証に携わりました。

 こうした仕事は、一見すると難しい法律や書類の世界に見えるかもしれません。けれど、その向こうには必ず誰かの暮らしがあります。「子どもに迷惑をかけたくない」「元気なうちに自分の希望を残したい」「家族のことで心配がある」。相談のきっかけは、ごく身近な思いであることが少なくありません。

 一枚の書類ができあがるまでに、家族のことを考えたり、これからの暮らしを思い描いたりする時間があります。法律の仕組みを整えることも大切ですが、その前に、何を大事にしたいのかをゆっくり言葉にしていくことが必要なのだと感じてきました。

3|退職して気づいた、経験の新しい使い道

 昨年7月、公証人を退職しました。長く続けてきた仕事を離れると、ほっとする気持ちと同時に、これから自分の時間をどう使おうかという思いも生まれました。

 そんなとき、地域の方々の暮らしにもっと近いところで、これまでの経験を役立てられないだろうかと考えるようになりました。そして同じ年の10月、ともの事務所に加わることにしたのです。もちろんともを支援する意味もあります。

 今は、遺言や相続、任意後見など、人生の後半に関わる相談や準備を中心に、親子で力を合わせています。もっとも、経験が長いからといって、私が何でも知っているわけではありません。新しい制度や実務の動きは学び続けなければなりませんし、息子の考え方に教えられることもあります。

4|親子だからこそ、違いもある

 親子で仕事をするのは、気心が知れている分、話しやすいところがあります。一方で、物事の進め方や考え方がいつも同じとは限りません。長年の経験を重んじる私と、自分の方法を模索する息子。意見が違うことも、きっとこれからあるでしょう。

 それでも、目指すところは同じです。相談に来られた方が、少しでも安心して次の一歩を踏み出せるようにしたい。そのためには、親子という関係に甘えず、互いの立場を尊重することが大切だと思っています。

 60代後半になって、息子と肩を並べて仕事をする。若い頃には想像もしなかった日常ですが、人生にはこういう新しい始まりもあるのですね。

5|「終活」は、特別な人だけの話ではない

 「終活」と聞くと、少し身構えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。遺言や相続といった言葉には、どこか堅苦しい響きがあります。私自身も同世代の一人として、できれば毎日は気楽に、楽しく過ごしたいと思っています。

 ただ、将来のことをまったく考えずにいると、いざというとき家族が困ることもあります。通帳や大切な書類の置き場所を共有する。自分が大事にしている希望を家族に話す。必要なら専門家に相談する。そんな小さな準備も、立派な「暮らしの備え」だと思うのです。

 もちろん、家族の形も、財産の状況も、これからの希望も人それぞれです。誰もが同じ方法を選ぶ必要はありません。「うちはどうだろう」と考えるきっかけがあるだけでも、意味があるのではないでしょうか。

6|このブログで伝えていきたいこと

 この「60代からの暮らしのセルフケア」は、暮らしを少し心地よくするためのブログです。健康や日々の楽しみと同じように、これからのお金や家族のことも、暮らしの一部として気軽に話せる場所にしたいと思っています。

 「終活・相続・法務」のカテゴリーでも、法律用語を並べるだけの記事にはしたくありません。私たちの年代だからこそ感じる不安や迷い、日常の小さな気づきから、遺言や任意後見、財産整理などの話題につなげていけたらと考えています。

 専門的な内容については、制度の違いや注意点もできるだけ分かりやすくお伝えしていきます。ただし、個別の事情によって結論は変わります。ブログは考え始めるための入口として読んでいただければうれしいです。

おわりに|人生の後半にも、新しい出会いがある

 長年の仕事を終えたら、これまでとは違う時間が始まる。そう思っていました。実際には、息子と一緒に新しい仕事を始め、知らなかった世界をまた少しずつ学ぶ毎日です。

 仕事に限らず、60代後半からの暮らしには、まだまだ初めてのことがあるのだと思います。家族との向き合い方も、自分の時間の使い方も、これから変わっていくのでしょう。

 息子「とも」との二人三脚が、どんな道につながっていくのかは、まだ分かりません。けれど、焦らず、一歩ずつ。これまでの経験を大切にしながら、今だからこそできることを続けていきたいと思います。これからこのブログを通じて、同世代の皆さんと、暮らしのこと、家族のこと、そして少し先の未来のことを、一緒に考えていけたらうれしいです。