はじめに|ノート一冊から始まったこと

 前回の記事では、「まずはノートを一冊用意して、財産のことを書き出してみませんか」とお伝えしました。
 今回は、その続きを私たち夫婦の暮らしに重ねながら考えてみたいと思います。
 財産の整理というと、何だか難しそうです。しかも、私たちのように特別たくさんの財産があるわけでもない家庭では、「わざわざ整理するほどのものでもない」と思いがちです。
 けれども、財産の整理は、お金持ちだけがするものではありません。
 今あるものを確かめ、これからの暮らしを考える。そのための小さな準備なのだと思います。

1|まず、お茶を飲みながら始めました

 あまり構えると長続きしません。そこで、ある日の午後、お茶を飲みながらノートを広げてみました。
 最初に考えたのは、次の3つです。
・どんな財産があるのか
・誰に何を残したいのか
・なぜ、そうしたいのか
 最初は「そんなに書くこともないだろう」と思っていました。
 ところが、いざ考え始めると、普段はあまり話題にしないことまで出てきます。
 お茶を飲む手が止まることもあれば、「そんなことを考えていたの?」と顔を見合わせることもあります。
 ノート一冊が、思いがけず夫婦の会話を広げてくれました。

2|財産は多くない。それでも整理することは意外にありました

 私たち夫婦には、特別に大きな財産があるわけではありません。
 持ち家もなく、現在は賃貸住宅で暮らしています。
 それでも、預貯金や株式、投資信託など、確認しておきたいものはあります。
 「財産がそれほど多くないのだから、整理も簡単だろう」
 最初は、そんなふうに考えていました。
 ところが、実際に書き出してみると、金額の大小とは別に、確認しておきたいことが意外にあるものです。
 どの金融機関に口座があるのか。夫婦それぞれが、どこまで把握しているのか。必要な書類はどこに保管しているのか。
 自分では分かっているつもりでも、もう一人が知らなければ、いざというときに困るかもしれません。
 最近は、通帳のない銀行口座や、インターネットで管理する証券口座も増えています。
 財産が多いか少ないかよりも、「家族がその存在を知っているか」「必要なときに確認できるか」ということが大切なのだと感じました。
 なお、暗証番号やパスワードまでノートに書く必要はありません。大切な情報の保管方法には、十分注意したいものです。

3|夫婦でも「思っていること」は違いました

 財産の整理を考えると、自然に子どもたちのことや、これからの暮らしのことにも話が広がります。
 財産が多くないからこそ、今あるものをこれからの生活にどう役立てるか、将来どのように引き継いでいくかは、身近な問題です。
 長年一緒に暮らしていても、考え方がすべて同じとは限りません。
 「そういう考えもあるんだね」
 そんな発見があるのも、夫婦で話し合う時間のよいところです。
 大切なのは、どちらかの考えに無理に合わせることではなく、お互いの気持ちを知ること。
 財産の話は、ともするとお金の話だけになりがちですが、その奥には家族への思いや、これからの人生への希望があるのだと思います。

4|「暮らしの整理ノート」を使ってみるのも一つの方法

 さて、白いノートを前にすると、「何から書けばいいのか分からない」という方もいらっしゃるかもしれません。
 そんなときは、あらかじめ項目が整理されたノートを利用するのも一つの方法です。
 私たちが関わっている「行政書士ともに法務事務所」のホームページでは、「暮らしの整理ノート」を無料でダウンロードできるようにしています。
 このノートには、預貯金などの財産の整理だけでなく、医療や介護についての希望、家族へのメッセージなどを書き留める項目も用意されています。
 財産が多いか少ないかに関係なく、これからの暮らしを考えるきっかけとして利用していただければと思います。


 A4用紙に印刷して、書けるところから少しずつ記入してみてはいかがでしょうか。
 全部を埋める必要はありません。まずは一つ、書いてみるだけでも十分です。